このリポートの要約
- 多次元加工が当たり前になった現在では交差が多く生まれている
- 交差面は当然バリ取りがもとめられる
- 交差部分のバリ取りは手間、さらに検査も大変と労力が大きい
- 切削加工時に交差部分の鋭角を面取りしてしまったらどうかと思案した
- 工程が一つ増えるが、同時に複数工程を減らすことができる
- 工程が減ればミスも減る。実現できれば使用後の予期せぬデブリも減らせる。
- 指定された交差内の処置にすれば図面を逸脱することもない
- 実行してみた
交差面の面取りはそれほど難しい話ではない。しかし、内側の交差面となれば話は別。とはいえ、ここはデブリになりやすい。さあ、どうするか。
切削加工においては、多次元加工が一般的でもあります。工作機器の進化はめざましく、旋盤加工でもマシニング加工においても複雑な形状のものを切削することは日常的な光景となりました。したがって、常に我々には技術的な理解とアイデアにおけるセンスが求められるようになっています。さて、この多次元構造の品物は、いたるところで交差が生まれます。斜め上から降りてくる穴と、中心を大きく走る穴とが交差するようなケースは日常茶飯事です。さてここで重要なのが、交差部分のバリです。交差するということは同時に加工することはできず、どちらかの穴を開けた後に、別角度から穴を開けるということになります。すると、交差は”内側”に発生するのです。交差させるときに少なからずバリが発生するため、そのままにするとかなり厄介な事象がのちに起こり得ます。ここをどうにかしなければなりません。
むろん、各社研究を重ねて対応をしている。それでも、内径部分のバリ取りを完璧にするのは難しい。そこに方法の考案チャンスがある。
内径交差のバリ取りに関しては、ハセヒキでの処理は「そもそもバリが極端に発生しにくい加工方法の実現」によって処置できるのではと考えました。当然、通常加工ではバリ取りが求められますが、とにかくこれが手間がかかる上に歩留まりも悪くなる。それならば、最初からバリ取り工程が発生しない加工処置を、図面の交差範囲内で処置できれば、切削加工上の手間が一手間増えたとしても、その後の複数の工程の手間が不要になり、十分に処置できることになると考えたわけです。同時に、クライアントにとってもバリ取り後、製品に使用して運用期間中に発生する別理由でのデブリを未然に防ぐことにつながります。我々にとってと、クランアントにとっての双方にメリットがあると判断できればやらない理由がないのです。
指定交差ないで面取りをしてしまうという発想。工具と機器とに限りない好奇心を注ぎたどり着いた、加工アイデアを実行力。
作業は極めてシンプルです。すごく簡単に言えば、接合面にまで切削してきた工具を抜いたのち、別工具を挿入し交差面をバリ取り指定サイズ内に収まるようにグルリと削り取るのです。これによって、交差部分の鋭角もなくなり、デブリ発生自体も防ぐことができるようになります。これは、図面上に指定されている指定交差内”でバリ取りだろうが、面取りだろうが、収めていけば問題ない、という発想から生まれています。この処置を実施したのは、文字通りごく僅かなケースで考案したからに他なりませんが、現在ではハセヒキにおける非常に重要な技術として定着しているものでもあります。
まとめ
- お客様から特に求められてはいない部分である
- 実現できれば新しいハセヒキの価値となりうるのものである
- 実はできないと思っているだけでアイデア次第では可能な技術
- 指定された交差内処置という発想は応用が効く
- 三方良しのアイデアかどうかを見極める必要性がある
- 実行した結果、ハセヒキの重要な技術になった