このリポートの要約
- ネジ山がシャープエッジのままだとデブリになりやすい
- デブリが生じるとネジは外れなくなり最悪その機械はそうとっかえになる
- 通常シャープエッジは平滑にカットされこのデブリを防いでいる
- しかし、ネジ山の登りと下り部分のシャープエッジのカットは難しい
- 基本的な納品物でもこの部分のシャープエッジカットは不要とされる
- ハセヒキではこの対応を実施している
- 我々が提供する部材は小さなものだが大きな結果につながると考えている
シャープエッジの処理は、切削加工の腕の見せ所でもありながら、一般的な認識以上の価値はないとされる。はたしてそうか。
ネジ山を作る時、切削では必ず先端が鋭角になります。このままネジを占めると、ナットとの摩擦によって先端部分がほぼ必ず”かけ”てデブリとなります。これはどのような素材でも起こり得る問題です。この極小のデブリが巨大な精密機械の大トラブルを起こしうる原因になります。たとえば巨大なタンクとタンクをつなぐジョイント部分でこれが起これば、デブリがガジりとなりネジが外れなくなってしまい、巨大なタンクそのものを廃棄しなければならなくなります。そこで、どのネジでもネジ山の先端を数コンマだけ平坦になるようカットします。これで、ガジりがなくなり、ネジの締まりと外し、双方が実現できるようになるのです
シャープエッジをネジ山全部に実現することは求められない。上りと下り部分にどのように対応するかに、価値を感じていた。
シャープエッジの面取りは極めて一般的な切削対応であり、図面にはほぼ100%指示があります。指示がなかったとしても特殊な指定がない限りは指示ありとして対応する類のものです。しかし実の所、シャープエッジの面取りはひとつのボルトの”すべてのネジ山”に対応しているものではありません。たとえば、ネジを切る時には、根本から頂点に向かって螺旋状に山が高くなり、ピークの高さを継続したのちには、再び螺旋状に下って行くことになります。この登りと下り部分のシャープエッジまで面取りするのが加工機械的に難しいため、基本的に対応する必要がないものとされています。が、ハセヒキとしては常々、なんとかすべてのガジりに対応したいと考えてきました。我々が対応できれば、それだけで巨大な機械の活躍期間が伸びたり、メンテナンス対応が楽になるということに貢献できるかもしれないのです。チャレンジしない手はありません。
加工方法を発見するために、アイデアを練る。この工程が我々の技術研鑽となる。コストをかけて価値を生む唯一の方法である。
そもそも、この手法を考案した案件は、大きなタンクとタンクを繋ぐ部分の大径パイプ加工依頼があったことに起因します。今から20年ほど前ですね。この時にふと感じた疑問からお客様にパイプがガジッたら交換するのか?と質問したことが始まりです。返事は「一旦ガジればタンクは廃棄、刷新」というものでした。そこで我々は、あくまで登り下りのシャープエッジも含めて面取りできれば、タンク廃棄の可能性を極限まで下げられると考えました。結果的に、こちらのアイデアをまとめ、工程プランニングとして実行し、すべてのシャープエッジの面取り加工を実現しました。結果的にこの提案はクライアントに喜ばれ評価を得、同時に我々には新しい技術が加わりました。今でも必要であれば様々なクライアントにこの方法を提案し、必要に応じて対応しています。ご興味があれば、またいつでもお問い合わせくださいませ
まとめ
- お客様から特に求められてはいない部分である
- 実現できれば新しいハセヒキの価値となりうるのものである
- 実はできないと思っているだけでアイデア次第では可能な技術
- 重要なのはお客様の”本質的な要望”を汲み取るためのコミュニケーション
- 次に”本質的な要望”を具現化するためのアイデアと理解、思考力
- 最後に重要なのはそれを実行できる行動力と工程プランニング力